足のお悩み百科

足のアーチの崩れ

この記事の監修者

株式会社AKAISHI 代表取締役 赤石恒一 / 保健学博士

靴医学の権威、新潟医療福祉大学大学院の阿部薫教授に師事。専門分野は保健学で、足の悩みの改善や、靴の機能向上のための研究をしている。
【所属学会】日本整形靴技術協会(副会長)、日本靴医学会

足のトラブルの原因は“アーチ”にあり!

といっても、言い過ぎということはありません。
偏平足や開張足のことを調べると、どこでもまずこの説明から始まると思います。それくらい大切なことなのであえて説明していきます。知っているよという方も、確認しながら、ご覧ください。

足のアーチは3つある

アーチの崩れがトラブルの始まり

アーチの崩れとは

「足を支える3つのアーチ。それが崩れると・・・・。」
足には、内側縦(いわゆる土踏まず)、外側縦、横という3つのアーチがあります。
内側縦アーチが崩れてしまった状態を(単純)偏平足といい、横アーチが崩れて足幅が広がってしまった状態を開張足といいます。どちらも、それ自体が大きな問題や障害になるわけではありませんが、加齢などによりこの2つのアーチが崩れてくると、外反母趾/足裏腱膜炎/タコやマメなどの痛みを伴う足の悩みを引き起こすスタートラインに立ってしまったということです。トラブル回避のためにもアーチの状態をしっかり確認して見ましょう。

 

アーチって、何?

そもそもアーチって何でしょう、どうしてそんなに大切なのでしょうか。

骨同士をつなげる靭帯 靭帯がなければ骨はバラバラに…

我々の先祖が樹上で生活していた太古の昔、その足には土踏まずはありませんでした。それが、地上に降りてチンパンジーのような4足歩行から、さらに歩行効率の良い直立二足歩行を始めたことで、土踏まずが形成されました。つまり、歩行するのに都合のいい足のカタチが、アーチ構造なのです。

アーチを構成しているのは、主に、骨、筋肉、靭帯です。アーチを支える役割は、受動的には靭帯が、能動的には筋肉が担っています。受動?能動?ちょっと言葉が難しいかもしれませんが、受動<受け止める>役割の靭帯は、ラップや輪ゴムのようなもので、骨と骨をバラバラにならないようにくっつけて、常にアーチを支えることが運命づけられているメーンの存在。それに対して、能動的に支える筋肉は、<持ち上げある>役割。靭帯だけでは支えきれないときにサポートとして活躍するスーパーサブというイメージです。

つまり、足のアーチというのは主に靭帯によってバラけないように固定された、アーチ型の骨組み構造のこと。このアーチが崩れるというのは靭帯が伸びたり、ユルくなったことでアーチ型の骨組み構造が破綻して、歩きにくくなることをいいます。

ところで、男性は靭帯の強度が女性よりも圧倒的に強いので、比較的足の悩みが少ないのですが、言い換えると、足の剛性(強度)の弱いコンニャク足※の人は偏平足や開張足になりやすいので注意が必要です。
※筋肉が弱り、こんにゃくのように柔らかくなった状態の足。甲の部分をギュッと握ると縮んで足幅が狭くなり、逆に、立った時に足の幅が広がってしまう足のことを言います。

アーチの役割

歩行の段階

歩行を図解してみましょう。まず踵がついて→①衝撃の吸収→②片足の状態になり→③蹴りだすという一連の流れにおいて足のアーチは主に3つの役割を果たしています。

  1. 歩行時の衝撃を吸収し、膝や腰への負担を軽減(クッション性)
  2. 親指の付け根、小指の付け根、踵の3点で支えることによる安定性の向上(カメラの3脚のように安定)
  3. 足部の剛性(強度)を高めることで、蹴りだし時の推進力の伝達効率を高める(バネ)

アーチがないと足裏への衝撃は大きくなる アーチ構造がバネとなって衝撃を吸収する

足のアーチが足裏の圧力の集中を抑え、膝や腰に伝わる衝撃を吸収しています。ですから、偏平足の人は疲れやすさに加え、膝の不調を訴える人が多いように感じます。もちろん、年齢や体重など原因はさまざまですが、偏平足が膝の不調に影響を及ぼすこと覚えておいてください。

アーチの崩れが引き起こす意外なデメリット

「靴のサイズが変わった?それ、アーチの崩れかも…」

アーチが崩れるとタコやマメができたり、足裏が痛くなったりと、色々な症状が出てくるのは、皆さん理解されているようです。ところが、見逃されている大きな問題があります。それは、靴のサイズ感が変わること。土踏まずの(縦)アーチが崩れると、足長が長くなり、横アーチが崩れると足幅が広がります。スニーカー等ではそれほど問題にならないのですが、パンプスなどでは、つま先があたるようになったり、親指や小指の付け根が圧迫されてタコやマメができるようになることもあります。

以前は、ちょうどよかった靴が

  •  つま先があたる。
  •  幅がきつく感じる。
  •  つま先や指の付け根にタコやマメができやすくなった。
  • くるぶしがあたるようになった。
  • 踵があたる。

このようなときは、アーチをサポートするようなインソールを今まではいていた靴に入れなおすか、サイズそのものを見直してみてはいかがでしょうか。

崩れてしまったアーチは元に戻るのか?

よくこんな質問を受けるのですが、「年齢や程度にもよりますが、ある程度、戻る場合もあるし、全く、戻らないこともある。」というのが、正直な答えです。

色々な報告によると、偏平足(内側縦アーチの低下)に関しては、後脛骨筋を鍛えたり、足底筋群を鍛えることで、回復傾向を示しているようです。とはいえ、100%の回復ではないでしょう。なぜなら、アーチをメーンで支えているのは、靭帯です。筋肉は鍛えることはできても、靭帯を鍛えることはできないのです。それでも、筋肉を鍛え続けた結果、筋肉のボリュームを増やすことで靭帯のユルユル状態が解消されれば、100%に近い状態に治るかもしれません。しかし、かなりキツイトレーニングを継続する必要がありますし、やり過ぎると逆に筋疲労によるアーチの低下を引き起こすこともあるため、逆効果となってしまいます。とにかく予防が一番です。

アーチの崩れを予防するには

「予防のためにはどんなことをしたらいいの?」

1. 適度な運動により、筋肉のボリュームを維持する

回復させるためなら、その効果はケースバイケースですが、予防効果についてはある程度有効といえます。足のグー・パー運動やタオルギャザー運動などは、先生によって考え方に差異があるようですが、2、3分であれば、やらないよりはやることで予防効果が上がるはずです。

2. 過度な体重の増減に注意

過度な体重の増減を繰り返すと、足の靭帯や腱が伸び縮みを繰り返すことになり影響を及ぼします。また、体重の増加には注意が必要ですので、気になる方は無理なく継続できる範囲でダイエットを行ってください。

3.大きめのサイズや、ゆったりしすぎの靴を履かない

サイズが大きい靴を履くと、靴の中で足が動いてしまいます。そうすると、足裏の筋や筋膜に余分な負担がかかってしまいます。それが慢性的な筋疲労を起こし、足底筋膜炎や偏平足を誘発してしまう恐れがあります。ピッタリ合ったサイズの靴を履きましょう。

4.靴の紐はしっかり締める

すべてはここに尽きるといってもいいくらい大切なことです。足指につながる根元のアーチをしっかり束ねることで、正常な足のカタチに近づけることができます。

詳しく見てみると、横アーチは遠位と近位の2つあり、崩れて痛みや変形などを引き起こしてしまうのは遠位横アーチですが、原因をたどっていくと、その根元にある近位横アーチ付近から開張足やアーチの崩れが始まります。この近位横アーチは、いわば、隠れた4つ目のアーチ。ここをしっかりと締めないと、その先にある長い5本の骨(中足骨)がバラバラになってしまいます。靴の紐をしっかり締めると、下図の赤い部分が束ねられるので開張足の予防につながります。また、開張足の方も、しっかりと靴を締めることで、靴の中で正常な足の形に近づけることができます。

近位横アーチは隠された4つめのアーチ 靴ひもが作用すると締められて正常な状態に近づく

偏平足の方も靴の中で足が動かないよう紐を締めることは、大きめの靴を履かないことと同様に大切です。
よく、「最近はもう、ヒールも履かないし、ゆったり目の靴を履くようにしている。」とおっしゃる方の中に、大きすぎる靴を履いている方がいますが、甘やかしすぎは禁物!気をつけてください。

この記事内容をシェアする
URLをコピーする
URLをコピーしました!

AKAISHI公式通販コンテンツ

記事の内容で解決しない場合は、専門家に相談

足の専門家によるお悩み相談
フットケア相談室

専門家による足のお悩み相談を承っています。足や靴でお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
※ご相談が集中した場合は回答にお時間をいただくことがございます。
※土日、祝祭日、年末年始、夏季期間は翌営業日以降の対応となりますのでご了承ください。

※お客様からお預かりする情報は、当社の個人情報保護方針よって適切な管理と保護に努めます。
※ご相談の内容によってはお返事に数日間をいただく場合がございます。