知らないうちにソールがボロボロ、ストラップやベルトがベタベタ！靴の加水分解とは？

下駄箱にしばらく保管していた靴を出してみたら、「底がボロボロ剥がれてきた」「合成皮革の表面がベタベタしている」といった経験はありませんか。これは『加水分解』と呼ばれる経年劣化で、靴のソールに使われているウレタンゴム（ポリウレタン）に起こる現象です。

豆知識：加水分解とは？

加水分解とは、化学の授業的にいうと「ある化合物が水と反応して、酸とアルコールに分解される反応のこと」。ポリウレタンは、もともと分子同士の結合が強くないという性質があり、水にふれることで、この結合が切れ、酸とアルコールに分解されます。これが加水分解と呼ばれる現象です。

靴の加水分解は、使用されているポリウレタンの部分が、雨や湿気などの水気に晒されることで起こります。特にポリウレタンが多く使用されているスニーカー等でよくみられる現象です。
具体的にいうと、ポリウレタン使用の部分が、裂けたり、ボロボロと粉々になったり、硬い部分であれば割れたりします。

どうしてポリウレタンを使うの？

加水分解が起こり得る素材でありながら、ポリウレタンが、広く靴の底材に使われているのには理由があります。

耐久性が高い…耐摩耗性が高く、靴底に使用した時に減りにくい。
柔らかい状態でも減りにくい…クッションに使われる素材の中には減りやすいものがありますが、ポリウレタンは、柔らかい状態でも減りにくい。
加工しやすい…複雑な形状にも加工しやすいので、ハイテクスニーカー等に広く使用されている。

以上のように、ポリウレタンには、弱点を補って余りあるメリットがあります。

どのくらいで加水分解するの？

加水分解は物質自体の経年劣化です。“劣化”というと「使用頻度が高い」「保存状態が悪い」等の原因が思い浮かびますが、ポリウレタンについては、水分があれば製造された時点より分解が始まり、3年〜5年で影響が表面化してくるといわれています。このため、ほとんどの靴メーカーは、製造後一定期間（何年かはメーカーによって異なる）が過ぎると加水分解により靴が破損することがある旨を、使用上の注意として表示しています。

メルカリやヤフオク、セールで靴を買う時は注意が必要！

ポリウレタンが使用されている靴の中古品を購入する場合は注意しましょう。特にスニーカーは、ポリウレタンが多く使われているので、より注意が必要です。メルカリやヤフオクで、未使用品を購入したのに、使い始めたらすぐにソールがボロボロになった…等はよくあるケースです。未使用品といっても、製造から３年以上経っている靴は、いつ加水分解してもおかしくない状態といえます。

また、「セールでまとめ買い」も要注意ですね。そもそもセール商品は、製造から年月の経っているものが多いからです。履かないで保存している靴であっても、湿気があれば加水分解が進んでいきます。また、お下がりの靴をお子様に履かせる場合も、ポリウレタンの使用の有無を確認した方が良いでしょう。

予防と対策

1.湿気を避ける

まず、雨の日に履いた時は、しっかりと水気を拭き取り、晴れの日に十分陰干しをしてから下駄箱へしまいましょう。また、下駄箱には、除湿剤を常に置いておくこと。ただし、湿気をゼロにできる訳ではありませんので、これで加水分解を防げるということではありません。

2.長期保管せず定期的に履く

靴には空気を含んだすき間があります。スニーカーであればクッション素材には常に空気が内包されていますし、パーツ同士のすき間にも空気が存在します。これらの空気は、履いて歩くことですき間から押し出され、新しい空気と入れ替わります。このように、ある程度の頻度で履くことで、ポリウレタンの部分が水分と化学反応することを防ぐことができるのです。